「おい、夏菜。
支度はできたか?」
利南子とのやりとりが終わった頃、障子の向こうから有生が呼びかけてきた。
「は、はい、なんとか……」
と言うと、障子が開く。
「どうしたんだ。
どっと疲れて」
「い、いえ。
兄と弟をいっぺんに狙われましてちょっと……」
ま、まあ、利南子さん、社長は特にお好きなわけではないようでよかった。
……いや、よかったって言うのもあれなんですけど。
なにか騒ぎが起きても大変ですからね、ええ。
利南子さんの積極性の前では、私の存在など塵《ちり》のようなものですから。
などと思いながら、
「すみません。
お待たせしました」
と言って、夏菜は恐怖のスマホをポイと鞄に投げ、立ち上がった。



