今夜、あなたに復讐します

 二人にしてみれば、相手を睨んでいた視界に突然、一切れのピンクのサーモンが降ってきて。

 それがペタッとガラステーブルに張り付いたところで、あのちょっと間抜けな感じの声の夏菜が、

「私のサーモンッ!」
ととてつもなく哀れげに叫んだのだ。

 二人は視線を合わせたまま、ぷっと吹き出していた。

「僕のあげるよ、藤原さん」
とまだ皿にサーモンがあった片方の男が笑って言う。

 そもそも、そのサーモンはびっくりするくらい薄くスライスされていて。

 そんな向こうが見えそうなサーモンごときで、あんなにも哀しむ夏菜がおかしかったのだ。

 一家に一台、藤原夏菜。

 一社に一人、藤原夏菜。

 背後に殺気を持った人間が現れたら、一瞬で相手を投げ飛ばすような女なのに。

 何故、本人の言動はこんなにも間が抜けているのか。