「なにしに戻ってきた」
夕方、道場に戻った有生はちょうど加藤とともに庭に出ていた頼久にそう言われた。
えっ?
貴方が週末だけ行ってこいって言ったんですよ、と思う有生に、くるりと背を向けながら、頼久は、
「ちょっと来なさい」
と言う。
そのまま、例の奥の間に連れて行かれた。
入って座るなり、
「お前、夏菜になにもしなかったろう」
と言われる。
「い、いや、キスはしましたよ」
と弁解のように言ってみたが、
「進歩しておらんではないかっ」
と叱られる。
……前回はキスして褒められたんですけどね。
っていうか、何故わかったんです、と思っていると、頼久はチラとこちらを見て言ってきた。
「夏菜はまだお前と微妙に距離をとっている。
まだなにもなく、相手を警戒している状態だ」
格闘家らしく、間合いで人間関係を分析できるらしい。
「でもあのー、ちょっぴり愛はあるらしいですよ」
「莫迦者。
そんなことはわかっておる。
そうでなければ、お前に夏菜をどうにかしろとは言わんわ」
と言ったあとで、頼久は自分の顔を見、
「……照れるな、そこで」
と言ってきた。



