今夜、あなたに復讐します

 そのとき、壁のシンプルな木の丸時計が12時をさしたのが見えた。

 もうすぐ道場に戻らねばっ、と有生はシンデレラのような気持ちで思いながら、一歩前に出る。

 夏菜に向かい、手を伸ばしたが、夏菜は軽く腕で止めてきた。

 間を置かずに、素早く反対の手を夏菜の肩めがけて繰り出すが。

 あっという間に腕をつかまれ、くるっと向きを変えた夏菜に一本背負いをかけられそうになる。

「させるかっ!」
とまた飛んで逃げた。

「やりますね、社長っ」
と笑う夏菜の顔を見ながら、有生は心の中で叫んでいた。

 カンフー映画を見たせいで、技のキレが良くなってるではないですかっ、お兄様ーっ!

 このままでは(らち)が明かない。

 有生は戦う意思のないことを示すために、だらんと手を下ろした。

 そういうアクションをすると、かえって戦闘中っぽくなるな、と思いながら。

 だが、夏菜はそれを見て構えを解いた。

「……夏菜。
 俺は戦いを挑んでいるわけじゃない」
と言うと、夏菜は、

 えっ?
 じゃあ、なにをするんですか?
という顔をする。

 頭が戦闘モードから切り替わらないようだ。