今夜、あなたに復讐します

 まだ山のようなグッズの入っているキッチンカウンターの上のビニール袋をごそごそやっていると、有生が言ってきた。

「失敗したな。
 この休みに、ぜひ、お前を襲ってみてくれとお前のジイさんと加藤さんに頼まれいてたのに」

「えっ? ……はっ?」
と動転して謎の言葉を発したとき、有生がゆで卵を綺麗に輪切りできるグッズを手にした夏菜の両腕をつかみ、引き寄せた。

 そのままキスしてくる。

 ええーっ、と飛んで逃げようとしたつもりだったが、普段の癖で、手刀を繰り出してしまっていた。

 だが、そこはさすがの腕前で夏菜の手刀を腕で止めると、有生は後方に飛んで逃げていた。

 身構えたまま有生は言う。

「……危ない危ない。
 隙を狙ったらいけるかと思ったのに、喉を狙ってきやがった」

 や、()るつもりはなかったんですけどっ。

 反射でっ。

 反射でっ!
と心の中で言い訳していると、有生がちょっと笑って言ってくる。

「お前にキスするのに必要なことは、隙をついてやったら、即、逃げることだな」

「……RPGの攻略法みたいですね」

 攻撃、退却、攻撃を繰り返して敵を弱らせるみたいな。

「いつ攻撃するかわからないからな。
 身構えとけよ」
と腕組みした有生に言われる。

 道場の癖で、思わず、はいっ、と言いそうになってしまったではないですか、と思いながら、一緒に食事の支度をする。