「……お前の兄さんの本が一番の敵だったな」
翌朝、あくびをして起きてきた有生が言った。
は? とキッチンで100均グッズなにを使おうかな、とごそごそしていた夏菜は顔を上げる。
「本読みながら寝落ちしてしまったじゃないか」
と言いながら、有生も横に並び、キッチングッズを手にとった。
社長のいい匂いがするな、と夏菜は思う。
会社にいるときとは違う。
まだ風呂上がりっぽい匂いがする。
会社にいるときは、スーツとか匂いのきつくない整髪料とかのちょっと武装した感じの匂いがするけど。
此処では違う。
道場だといろいろ雑多な匂いがあって、一緒に暮らしていても、そんな風には感じなかったけど。
……ちょっとどきりとしてしまうではないですか、と思いながら俯く。



