今夜、あなたに復讐します

「お兄さん、売れっ子作家になったら、ますます帰ってこないだろうが、いいのか?」

 そう問われ、夏菜は考える。

 お兄様が帰ってこない。

 現状、このまま。

 お兄様が帰ってこられる。

 お兄様が道場と会社と七代目を継がれる。

 ……そしたら、私が社長と結婚する理由がなくなるわけですよね。

 いや、別になくなってもいいのですが……。

 で、でも、買ってきた100均グッズ、まだ全部使ってませんしっ。

「あっ、あの、私は……っ」
と迷いながらも口を開いたとき、そこに有生の姿はなかった。

 見回すと、ソファの前のラグに座り込んで、積み重ねられた耕史郎の本を読んでいる。

「面白いじゃないか」
と真剣だ。

 その横顔を見ながら、夏菜は、

 今、危うく、もう少し此処にいたいですとか言ってしまうところでしたよ……と思っていた。