今夜、あなたに復讐します

 耕史郎は誤魔化すように、
「まあ、その話はいいじゃないか」
と言ったあとで、

「呑むか?」
と棚から黒い酒のボトルを出してきた。

「いりません」

「もう呑める年になったんだろう?」

「はい。
 お兄様が逃亡されている間に」
と夏菜が嫌味をかますと、耕史郎は有生だけにグラスを渡す。

「呑め」
と言われても、有生はグラスを見たまま黙っていた。

 耕史郎は渋い顔をし、有生に言う。

「……なにも盛らないぞ。
 お前、俺を祟り殺すわけじゃないんだろうが。

 っていうか、俺が逃げたのは、祟り殺されると思ったからじゃなくて、道場とか会社とか継ぐのがめんどくさかったからだからな」

「本当ですか? お兄様」
とまだ警戒するように立ったままの夏菜が身を乗り出し問うと、耕史郎は黙った。

 やはり、怖いのもあったんだな……と思う。