頼久に挨拶してから走って帰る、という夏菜たちを加藤が止める。
「いや、お車ご用意しますよ」
と加藤が言っているうちに、頼久がやってきた。
一緒に近くの和室に入り、少し話したが、頼久は、
「夏菜。
ちょっと雪丸の稽古を見てやりなさい」
と言う。
これはっ、と思い、夏菜は有生を見た。
有生がこくりと頷く。
それは明らかに夏菜に席を外させるための口実だった。
雪丸は稽古をするどころか、庭で鼻歌まじりに薪を割っていて、
「こんなに薪いるかーっ。
いいから稽古しろーっ」
と怒鳴られていたからだ。
社長、あとで教えてくださいよ、と思いながら、夏菜は手をついて頭を下げ、座敷を出る。
きっと、あのマンションについての話だろう。



