今夜、あなたに復讐します

 今、俺は人生最大の岐路に立たされている気がする。

 俺の人生に此処までの選択肢が現れたことはなかったっと指月に、
「いやいや、仕事のときはどうなんですか」
と言われそうなことを思いながらも、有生は夏菜の側に手をつき、少し身を乗り出してみた。

 真上からその白くて小さな顔を眺める。

 そのとき、ぱち、と夏菜のまぶたが本当に音を立てて開いた気がした。

 眠り姫が目を覚ましたようだが。

 この眠り姫は目を覚ました途端にキレた。

「い、今、私を殺《や》ろうとしましたねっ」

 なんだかわからない緊迫した気配を感じましたっ、と言い出す。

 確かに緊迫していた、と有生が思っていると、

「や、やっぱり私を騙したんですねっ。
 結婚するとか言って、油断させて、貴方に復讐しようとしていた私を始末しようとっ!

 おかしいと思ったんですっ。
 貴方みたいな人が私なんかと結婚するとかっ」
と言いながら、夏菜は側にあった鞄をつかむと、飛ぶような勢いでいなくなってしまった。