ワイヤーで工作をしたあと、有生は夏菜がバッグに入れていた文庫本を借りて、ソファで読んでいた。
ふと足許を見ると、夏菜は何故かおろし器をつかんで寝ている。
これでなにを作ろうかなどと考えながら、慣れない此処での生活に疲れて寝てしまったのだろう。
有生は、ソファに寄りかかり寝ている夏菜の顔を覗き込む。
……気持ちよさそうに寝てるな。
なにかかけてやらねばと思いながらも、動かず、夏菜の顔を見つめていた。
広田辺りが見たら、
「色気が足らない」
と切って捨てそうな寝顔ではあるが。
今の自分には例えようもなく可愛く見えていた。
例えるなら、出張先ですぐ近くにあったので、仕方なく入った地下の喫茶店のメニューのような可愛さだ。
『雪の日にふわりと舞い降りた天使の羽ばたき』みたいな、と例えようもないと言いながら例えつつ、夏菜の顔を眺めていると、ふと、頼久の言葉が頭に蘇ってきた。
「いいか。
くれぐれも言っておくぞ。
一緒に住むのなら、絶対に夏菜には手を出すな」
試されているっ、と有生は固まった。
俺は今、試されているっ!



