今夜、あなたに復讐します

 夏菜は男の手を空いている足で蹴り、その手が離れた隙に、男が落としていた鉄アレイをつかむ。

 男の両腕を両膝で抑え、鉄アレイをその喉仏に突きつけた。

 身動きできなくなった男がグッとつまる。

 深めに被っていたキャップが落ちた。

 イケメンだった。

「大丈夫ですか?」
とそのままの体勢で、夏菜は男に確認する。

 いや、イケメンだったから訊いたわけではない。

 有生を撲殺しようと……、

 いや、ぽこり、と長年の恨みを込めて殴ろうと思っていただけなのに、うっかり他人様を殺してしまってはまずいからだ。

 後ろから、
「やっぱり、俺がお前に祟るより先に、お前に()られそうだな。
 それじゃ、男は寄り付かないだろう」
と有生が言ってきた。

 お前に迂闊(うかつ)に迫ると命に関わる、と有生は言う。