今夜、あなたに復讐します

「おかしいですね。
 なにもなかったです。

 マンション立ち退けーって叫ぶ人たちもいませんでしたよ」
と言いながら戻って、

「……当たり前だ。
 このマンション、こう見えて、結構前から建ってるからな」
と言われる。

 外観も綺麗に管理されているので、新築のように見えるが、すでに新築というわけでもないらしい。

「そうなんですか?」
と言いながら、夏菜は、今、バルコニーから見た景色にも、やはり見覚えがあるな、と思っていた。

 有生の前に戻って、ぺたりと座る。

 床暖(ゆかだん)あったかい、と思いながら、黒いワイヤーやワイヤーバスケットを眺め、これ、なにに使おうかなーと考えていたとき、また、

 おおおおおお……
という民衆たちの叫び声が聞こえてきた。

 夏菜は今度こそ、声のする方に歩いていく。

 そこはキッチンだった。

 動いているものは食洗機しかない。

 夏菜は食洗機に耳を寄せてみた。

「社長っ」
と慌てて叫ぶ。

 まるで兵士が隊長を呼ぶように。