「社長はいい人なんですかね?
悪い人なんですかね?」
秘書室で明日やる予定だった仕事をしながら、ぼそりと夏菜が言うと、指月が顔を上げてこちらを見る。
今日は上林は別居している家族と出かけているらしい。
再就職の報告をするそうだ。
指月が自分の椅子に腰掛けながら言う。
「まあ、なんだかんだで、女性の復讐者っていないからな」
私がいますよ、という視線を感じて、指月はこちらを見た。
「お前はなんだかわからない祟りのせいだろう。
そういうのでなくて、女でナイフ持って突っ込んできた奴はいない」
「それ、社長が仕事の上でもフェミニストで女には恨まれないって話ですか?」
いや、仕事の話じゃなくて、と指月は言う。
「あの顔と財力があったら、いくらでも女性を騙すことができるのに、騙してない。
いい人なんじゃないか?」
「……そこ、ありがたがるとこですかね?」
と思わず言ったが。
そういえば、ゆうべも廊下で寝てくれたみたいだしなー、寒いのに。
意外と不器用で真面目なのかな、と思ったあとで、ふと気づいて指月に訊いてみた。



