俺と結婚することになってよかったのかと訊こうと思った。
だが、うっかり訊いて、嫌です、と改めて言われたら、なんて返したらいいのかわからないから、黙っておこう。
そう有生は決意する。
心の中はかなりヘタレな感じだったが、せめて、態度だけは今まで通りでいようと、腕を組んで偉そげな態度をとってみる。
「お前まで休日出勤しなくてもよかったんだぞ」
「はあ。
でも、あのまま家にいるのもなんだかいたたまれなくて……」
そう夏菜は言ってきた。
銀次あたりにいろいろ言われそうだからだろう。
「そうか。
だが、今日は休みで人が少ない。
……気をつけろ」
あ、はい、と右手に見えてきた会社を窺いながら、頷いたときには、夏菜の顔は、あのぼんやり顔ではなくなっていた。
さすが要人警護の人間を育てる道場で育っただけのことはあるな、と思う。
……というか。
たまに見せる凛々しい感じの顔つきも可愛いな、と思ってしまったことは黙っておこう。



