「いや~、だから、知らなかったんですよ、私は。
社長が来られたから、部屋割りが変わったので、大広間で寝てくださいって言われただけで」
と夏菜は有生とともに、普段は閉じられている門をくぐって、車が入れる場所まで山を下りる。
「お前は自分の部屋があるんじゃないのか。
あの家の娘なのに。
かわってくださいとかあるのか」
荷物や家具があるんじゃないのかと有生に問われるが。
「いやいや、それがよくあるんですよ。
だから、私は家具も荷物もあまり持ってないんです。
いつでも移動できるように。
さすらいのジプシーみたいな感じですよ」
と言って、
なんだ。
さすらいのジプシーって、という目で見られる。
「ま、家具なんかの大きな荷物はほとんど家に置いてますしね」
「家、此処じゃないのか?」



