なんだあいつは、ズボンの裾なんてめくって。
腕まくりも可愛いじゃないか。
何故だかわからないが、必死にズボンの裾をめくったり引っ張り上げたりしていた夏菜を思い出し、有生は赤くなった。
……しかし、こんな時間からなにするんだろうな? 風呂掃除か?
いや、それは雪丸たちがやってたな。
もしや、更に身体を鍛えようとかっ。
夜のトレーニングメニューとかあるのかもしれない、と思い、有生はゾッとする。
今でも、こいつ、実は俺より強いんじゃ、と思う瞬間があるのに、と不安になった有生は横を歩く加藤に呼びかけた。
「あの、加藤さん。
すみません」
「なんです?」
「誰か俺を鍛えてくれませんかね?」
そう言うと、加藤は笑い出した。
「それは感心なことですね。
わかりました。
手配しときましょう。
……もしよろしければ、少しなら私がお相手しますが?」
と加藤は笑う。
加藤は焦げ茶の作務衣など着て、普段は事務仕事をしていることが多いようだが。
総帥の右腕というくらいだから、きっと強いのだろうな、と思い、有生は身構えた。



