お風呂上がりに廊下を歩いていた夏菜は雪丸に出会った。
あ、お疲れ様でーす、と笑うと、
「お疲れ様です、夏菜さん。
いやあ、あっという間に結婚決まって、よかったですね」
と言われた。
「いや、別によくはないんですけど……」
と言うと、
「そうなんですか?
あまり抵抗なさらないから、もう諦められたのかと」
と雪丸が笑ったとき、
「お嬢」
と障子の陰から声がした。
ひっ、と思って見ると、銀次だった。
少し開いた障子の隙間から銀次が低い声で言ってくる。
「お嬢……。
もし、破談にしたければ、親分に呆れられるようなことをしたらいいですよ」
「意識しなくても、今にもしそうですけどね~」
と雪丸が軽く失敬なことを言ってきた。



