「よろしくお願いしますっ」
夏菜は樫本部長に最敬礼して頭を下げた。
「ああ、うん。
よろしく。
えーと、みんなには君が社長の命を狙ってきたことは伏せてあるからね」
「ありがとうございますっ。
よろしくお願いいたしますっ」
「……なんか君、張り切ってるけど。
社長殺しに来たんじゃないの?」
「いや、殺しに来たというか。
まあ、ちょっと復讐に」
「社長にもてあそばれたとか?」
と真面目そうな部長だが、そこはやはり、ちょっと興味を覗かせて訊いてくる。
「いえいえ、先祖の恨みです」
そんなことで申し訳ない、という風に夏菜は苦笑いして言った。
あの必死の形相でナイフを手に突っ込んできたおじさんに比べたら、自分の復讐の優先度なんて、低くていいような気がしてきたからだ。
なにがあったか知らないが、あの人にまず殺させてあげたいと思ってしまう。



