今夜、あなたに復讐します

「あのー」
と遠慮がちに殺し屋は話しかけてきた。

御坂(みさか)社長はいつもあんな感じに狙われてるんですか?」

「そうですね。
 朝の日課のように狙われてますね」

 いや、毎日、刺客が訪れるわけではないが。

 そのくらい当たり前のことになっている。

 ……ああいう連中が毎日やってきたら、この会社パンクするけどな、と思ったとき、総務のフロアにエレベーターが着いた。

 チン、と音がし、扉が開く。

「さっきいらした総務の樫本(かしもと)部長の指示に従ってください。
 私は上のフロアにいるので、困ったことがあったら、いつでもお呼びください。

 それから、帰る前に、社長のところに顔を出された方がいいですよ」
と言うと、えっ? という顔をされる。

「行ってもいいんですか?」

 さっき、殺しかけたのに?
と思っているのだろう。

「ま、一度行ってみてください。
 私は社長秘書の指月です」

「あっ、藤原夏菜(ふじわら なつな)と申しますっ」
と言って、ペットボトル殺人未遂犯、藤原夏菜はペコペコと頭を下げてきた。