あれから数年の月日が流れた。三つ目の試練を待たずに脱退した私を除き、兄二人は取っては取られての繰り返しだったそうだ。でも、それも今日で終わる。

「いよいよ帰国出来るねぇ、エイミアちゃん」

「えぇ、そうね」

今思えば長男の言っていた“王座に就いたら妻になれ”という約束は私への謝罪の気持ちだったのかもしれない。弟が取り返しのつかない事をして申し訳ない、償いとして国王の妻に迎えて何不自由ない暮らしをさせたいと。
皆、自分勝手だわ。国王と妃は事実が広まるのを恐れて私を近くに置いておきたかった。次男は私の両親が自分の身代わりなったという辛い事実に蓋をして思い出さないようにしていた。そんな次男を見続けてきた長男は自分が罪を被って償おうとした。そうした方が気が楽だったから。
私もそう。皆のためとか言っておいて本当は帰るのが怖かっただけ。クロエラに会えなくなる事も、家族と呼べる人がいなくなる事も。故郷の皆を思い出せなくて孤独になるのも怖かったんだ。