犬奴隷に懐かれました~伝説級?そんなことよりもふもふしてもいいですか?~

 こんな状況だというのに、ほっぺたをひっぱるとすぐにバーヌは尻尾を揺らす。
「可能性だから!絶対とは言えないから、無理はしないで、絶対、絶対、帰ってきてっ!」
 バーヌの後ろ姿に声をかけると、尻尾がぶんぶんと大きく振られました。
 あれは、もしかして、感情でなく、3つめの手かなにかで、単にバイバーイと手を振っているだけなのかもしれませんね……。
 今から危険に飛び込もうとしている感情と結びつきません。
「首の表と裏…たしかに、喉と首の後ろじゃ全然別もんだな……」
 冒険者の一人が私の腕をつかみました。
「坊主、すまん。お前が金狼の足手まといになってると思った。許してくれ」
 いえ、事実だと思います。
「金狼が認めただけの人物だな。ただの子供じゃない」
 いえ、ただの子供のふりをした大人です。
「よく、思いついたな」
 ごめんなさい。私が思いついたんじゃいです。鑑定魔法で、検索して出てきた情報なんです。
 何かを冒険者さんが言うたびに、申し訳ない気持ちになって下を向きたくなります。
 ですけど、下を向いている場合じゃないです。
 ナイトヘッドドラゴンを見ると、首の内側にバーヌが飛び込もうとすると、まだ正気を保っているつ6の首が邪魔をします。
 あれだけ必死に邪魔をするということは、本当に弱点が首の内側中央の円の中なのかもしれません。
 6つの首の気を引く手段……。
「ルクマールさーーーんっ」
 大声でルクマールさんを呼びます。
 ですが、聞こえるはずもなく……。すると、ギルドの職員さんがすぐこちらを見ました。
「ルクマール、すぐに来てくれ」
 と、拡声器のように響く声を出してくれました。
 職員さんに軽く会釈してお礼をします。
「何だ?」
 息を切らしながらルクマールさんが駆けつけてくれた。
「バーヌが首の付け根の中央、内側に飛び込めるように6つの首の注意を同時にひいてほしいんです」
 ルクマールさんがナインヘッドドラゴンと対峙している冒険者たちを見ました。
「同時……か。注意を引き付けられそうなのは、俺を入れて4組だな。あとは運しだいと言ったところだろう」
 あと2つ。
 振り返って倉庫代わりのテント前の冒険者さんに質問します。
「中身は酒でなくても構いません。樽はまだありますか?」
「ああ、空の樽が2つ、蓋がない水樽が2つある」