犬奴隷に懐かれました~伝説級?そんなことよりもふもふしてもいいですか?~

「鑑定魔法で、物の価値はすぐに分かるんだけど、人を見る目は経験を積まなくちゃ立派な商売人にはなれないんだって。行こう、バーヌ」
 バーヌの手を取って店を出ます。
 店を出たところで、バーヌが声をかけてきました。
「ユーキ、あの、さっきの話は?」
「ああ、作り話。嘘つくのは悪いことだけど……悔しかったんだ」
 ぐっと奥歯をかみしめると、バーヌがしゅんっと頭を垂れました。
「申し訳ありません。僕が……奴隷だから、適正価格で買い取ってもらえなくて……」
 違う、違う。怒りに握り込んだ指先が冷たくなります。
「ボクは、自分がいやになる。こうしてバーヌに謝らせてしまった自分がほんとうに嫌だ」
 くるりと振り返り、後ろを歩いていたバーヌの顔をじっと見ます。
「あのね、あの人は、バーヌが奴隷だから足元を見ただけじゃなくって、ボクも子供だから言いくるめようとしてたし、他の人にだって、足元を見てちょっとずるいことする人なの!だから、バーヌが悪いんじゃなくて、あの人がいい人じゃなかったってだけ」
 バーヌが小さく首を傾げる。
「僕は、ユーキほどいい人を他に知らない。ユーキを基準にすればみんないい人じゃないよ……」
「なっ、だから、ポーションはその効果を見せるために飲ませただけで、恩にきる必要ないし、善意じゃなくて、僕の利益を考えてのことだから」
 いい人なんてとんでもない。今だって嘘をついておかみさんをだましましたし。
 いくら腹が立ったからって……。
「いいえ、ポーションより前。僕が道に倒れていたときに、大丈夫かと声をかけてくれたでしょう?本当に心配してくれているのが分かった」
 あ、ああ、そういえば。でも、あれも、元はと言えば、私がバーヌにけっつまづいて上に倒れたからで……。

「でも、それを言えばパンをくれた冒険者もいい人だろ?」
「そうですね。でも、ユーキはそのあと、ポーションを飲ませてくれた。自分のためじゃないでしょう?ジョーンさんを助けるためだったでしょう?」
 うっ。
「それは、だって……ジョーンさんには乗合馬車の中でいろいろ親切にしてもらったからだし……それに、そのうまくいけば孤児院の助けになるかなんて下心があってのことだし……」
 なんだろう、この忠犬ハチ公みたいな絶大なる信頼感……。本当に、私、そこまでいい人じゃないですよ。