犬奴隷に懐かれました~伝説級?そんなことよりもふもふしてもいいですか?~

 コツコツと、フィーネさんが歩いて、私たちの前に立ちました。
「ユーキ、ありがとう。あなたへの報奨金はあとでお支払いするわ。それから、バーヌへの報奨金の件は、上には話をするけれど……私の一存でできるのはあそこまで」
 と、バーヌに渡した剣に視線を送ります。
 これが精いっぱいのフィーネさんの誠意だというのは分かりました。感謝するべきことなのでしょう。
 確か買い取った中で一番高い剣だと言っていました。
 でも、納得したくありません。
 誰よりも危険な場所で、誰よりも活躍したバーヌが報われないなんて……。
「フィーネさん、士気が下がるとは思いませんか?」
「え?士気?」
 この世界の常識なんて知りません。
 だから、私は日本で生きてきて、知っている常識でしか物事を語れません。
「バーヌのように冒険者並みに戦える奴隷が他にもいたとしても……戦っても何の褒美ももらえないのに、本気で戦うと思いますか?」
 フィーネさんが黙って私の話を聞いています。思うことがあるのでしょう。
「ご主人様に命令されて、いやいや戦うことがあったときに、奴隷で一生を終えるならこのまま死んでもいいかと思うことはないと思いますか?ご主人様が自分を守れと命令したとしても、死んでもいいかと思っている奴隷が守り切れると思いますか?」
 ふぅっと息を吐く。
「士気があがる、やる気がでる、目標を持って生きる……どれも、やる気も目標もない人が同じことをするよりも成果が出ます」
 力でねじ伏せ支配して無理やり働かせるようなブラック企業より、福利厚生を整え、褒めて褒美を出す企業のほうが業績は上がります。
「まぁ、そうだろうなぁ。冒険者も、今回のような強制依頼……貢献度に応じて褒賞が出なかったら、こっそり遠くから攻撃する振りだけしたほうが楽だもんなぁ」
 いつの間にかジョジョリんさんとクラノルさんがフィーネさんの後ろに立っていました。
「だけど、奴隷は奴隷ですし……。冒険者と一緒というわけには。それに、主人が奴隷の行いのすべての権利を有して……」
 ぎゅっと手を握り締めます。
「今回は、ユーキがバーヌを貸してくれたという形になって、主人であるユーキにバーヌの手柄がすべて行くことになるのよ……そういうもので……」
「ボクが、バーヌをギルドに……貸す?」
 それって、私の知っている言葉で置き換えるならば……。