「まあいいや。試してみれば分かるよね?」
庭から微量の殺気を感じ取った私の勘は小さいながらに冴えていたらしい。
彼が一瞬のうちに私の胸ぐらを掴み、上から吊るすように高く持ち上げた。
ただでさえぶかぶかのTシャツがブランコのようにぶらぶらと揺れる。
身体が震えすぎて視界が定まらない。
動体視力の良さが自慢の私の目は、完全に恐怖で潤んでいた。
叫びかけたその時、咄嗟に彼が私の吸い込んだ息を遮る。
「子供は嫌いなんだ。」
「っ!!!!」
彼がスーツの内ポケットから小型の折り畳みナイフを取り出した。
手首のスナップを効かせナイフの刃を出す。
まずいっっ!!!!
なんで私はこんな時にこんな小さくなってんだ!!!!
「声を上げたら君を切りつけるからね?」
揺れるTシャツの横からチラチラと彼の不気味な笑顔が見える。
ふと下に目をやるとけっこうな高さまで持ち上げられている。
このまま腕をシャツから抜いて下に落ちても怪我をするかもしれない。
それにきっとすぐに捕まる。
怖すぎて目から涙が出るのをためらっているのが分かる。
この人は誰なんだろう。
少なくとも"宮部"ではないということは分かった。
彼が揺れる私から何かを感知したように深く深呼吸をする。
「うん、小さくても狂血の匂いはするね。」
それはきっと私の血を求める人物であると同時に、彼がヴァンパイアであることを意味する言葉なのだろう。
そんなことよりもプラプラと胸ぐらを持ち上げられている私の下半身はパンツ一丁だ。
最悪すぎる展開に私の思考と顔はぐちゃぐちゃになっていた。
震える小さな手足をどうすることもできない。
「君のお姉さんはあんなことがあっても一切叫ばなかったらしいよ?
だから君も、頑張ろうね??」
耳を疑いたくなった。
それを言われると余計に私の恐怖を煽るのだということをこの男はよく知っているのだろう。



