真っ白な赤目のウサギの背中にそっと触れてみる。
ウサギは触られることに慣れている様子でひたすらニンジンをかじっていた。
「・・・ふてぶてしいウサギだな。」
「うん。」
「でも毎日人間に囲まれて、きっとこいつは寂しくないだろうな。」
「うん。そうだね。」
凌久が私と同じようにしゃがむとウサギの頭を指で撫で始めた。
「知ってるか?スイスでは子ウサギを一匹では飼えない法律があるって。」
「え。そんな法律あるの??」
「ウサギはストレスに弱い生き物だからな。"寂しくて死ぬ"ってのはあながち間違いじゃないらしい。」
「へえ。」
ウサギは寂しいと死んじゃう話、確かに聞いたことがある。
私からすれば只何気無く聞いていた言葉だった。
でも凌久にとってその言葉は、凌久の"ほっとけない精神"を造り出すほど重要なものだったようで
凌久が私に、「俺の元に来い」って言った意味を知る言葉でもあった。
ヒクヒクと鼻を動かすウサギ。
白く短い毛並みが生温い風に揺れている。
「・・・俺には昔、救えなかった命がある。」
「・・・え?」
ニンジンに飽きたウサギが他のウサギの元へと走って行った。
凌久がそれを目で追う。



