「そうなったのは全部僕のせいだから、兄さんからは嫌われてるんだよ。」
「・・・・そう・・。」
「唯一の兄弟なのに、何やってんだろうね。なんか寂しいよね・・・。」
宗平の洗ってくれている手が止まることは無く、
肩に掛かる髪の毛を前へと分けられると、今度は背中に泡が駆け抜けていく。
「母さんの理不尽な暴力の痛みを2人で分かち合えたかもしれないのに。」
細い声が浴室内に木霊する。
・・・そういえば・・・
宗平には身体に煙草の焼痕が残らないよう沢山の塗り薬を貰った。
でも20歳の私には冗談でも「塗ってやろうか」なんていうことはなく、
しかも塗り薬を直接私に渡すこともなく、
よく玄関のドアノブに掛けて置いてくれていた。
それが宗平にとっては気を遣う行為だったとしても、私には距離を取られているようでなんだか寂しかった。
何故今そのことがふと頭をよぎったのか。
もしかしたら宗平は私の寂しさに気付いていたのかもしれない。
母親のDVで理不尽に傷付けられる痛みも、兄弟に突き放される寂しさも宗平は知っているはず。
女嫌いな宗平は女である私にどう接していいのか分からなかっただけで、
本当は私とも分かち合いたかったのかもしれない。



