いつもより混雑している電車の中。



いろんな匂いがするけど




萌を守るようにたつアラタの



コロンの香りが



かすかに



頭上からして



顔を上げた萌。



萌を見ていた?アラタと



目が合って。



いつもの



ん?って



笑顔になるアラタに



何だか、ジリジリ胸が変な感じで



萌は、笑うことができなくて…。



そんな萌の様子に



アラタがちょっと近づいて




「萌?どうかした?」




聞いてくる。



いつもと同じように優しい



アラタ。




何でもない。ほんと、何でもないよ。



そう言わなくちゃいけないのに



萌は、言葉が出てこない。




だって、



それは、嘘だから。




アラタくんといると



うううん。ひとりのときでも



アラタくんのことばっかり考えて



嬉しくなったり、苦しくなったり



ぎゅうって、胸が甘くしめつけられたり



ぎゅうって、胸が切なくしめつけられたり



ひとりでバカみたいに




上がったり、下がったりしている。




うざい。うざい。うざい。



気持ち隠して何でもないふりできない自分。



さっきからずっと



気になってる。



アラタくんさっき



怒ったのって




ミサキさんに、誤解されたくなかったのかな




とか。



やっぱりああいう年上の



おんなのひとがタイプなのかな



とか。




アラタくん。



ミサキさんが好きなの?




聞けないくせに




ずっと考えてしまう。




そのとき、電車が揺れて



「わっ」



アラタが人に押されて、



萌をドアに押し付けるように密着した。



アラタの固い身体が萌の肌に



突出している胸に



ギュって重なって。



「ごめん。萌


大丈夫?」



慌てて


踏ん張って、少し萌から

 

身体を離せたアラタ。




そう言って萌の方を見るアラタの



目の前に



上目づかいでアラタを見上げる萌。



何か色っぽいその表情の下には



グッて迫力のある胸。



時が止まったようにアラタを見つめる萌に



「…萌?



大丈夫?」



いつものアラタの声。



萌は…。



萌は、顔から火が出るかと思った。



「な、何でもないよっ。」



そう言って、下を向いたまま



顔を上げられない。




わたしって、



わたしって、



何やってるの?




何て




嫌な、




あざといオンナなの?




あんだけ、嫌だって



オトコの子はエロいから嫌いだって



見られたくないって




言ってたのに




今、アラタくんに…




すごい…あざといマネした。




胸…アピールしようとした。




アラタくん。何こいつ。って



思ったよね?



恥ずかしくて、恥ずかしくて




顔上げれないよ。




だけど、



だって、



それでもいいから



わたしを見てほしいって




思ってしまったんだもん。




わたし…



こんな自分はじめてだ。




ひとを好きになるって、



今までの自分が



自分じゃなくなるくらい



欲しいものができるんだね。




わたし、



アラタくんが好きなんだ。