萌のラインが鳴った。



『横見て』



え?



カフェの窓際で



お茶してた萌と紅葉(くれは)




窓を見ると



「よっ」って笑ってるアラタくんと



ふざけて窓に張り付くコウタくん。



『そっち、行ってもいい?』ジェスチャーに




いいよ。



萌が呼ぶ。



2人に連れられて、いやいや感ありで



一緒に入ってくる奏。



「何やってんのー」コウタの言葉に



「もうすぐ夏休みだから



どこ行こうかーって話してたとこ」



夏特集の雑誌を見せながら答える萌。




「いいねー」



盛り上がる会話。



紅葉はチラッ。



奏に視線をやる。



別に機嫌悪そうとかじゃないけど…



このひとだけ…




うちらを認めてないよね。



やっぱり、あれかな…?



わたしが最初にあんなこと言ったから?



紅葉がそんなこと思ってたら



「やっぱ、海でしょ。



行こーよー。みんなで」



無邪気にコウタが言った。



「海かー。いーなー」


アラタも賛同してるけど。



紅葉は、この前



奏に言われたことを



思い出してた。



『お前が水着でいたら、



絶対ムラムラするもん。』



なんて言われた手前。どうなの?



海。



隣の萌も、ちょっと



戸惑った顔。



そうだよね。




水着って…構えちゃうよね。



海は断る方向で…って



紅葉は思ったんだけど。



紅葉と萌が



ドリンクバーから



戻ってくると、



奏が話しているのが聞こえちゃった。



「海はオトコだけでいいんじゃね。」



「何だよ。奏。」



アラタがコーラーを飲みながら



言うと、



「…めんどくせー。」



ほんとにめんどくさそうな口調の奏。



「?


何が?」コウタが言うと



「…水着とか、ムリだろ。



あの子ら。



気使うのめんどーじゃん」



「それに、ナンパできねぇなんて



つまんね」



ストロー噛んで、笑って言う奏。



「あーっと。奏ちゃん」



コウタの声で



奏は、




後ろで聞いていた萌と紅葉



に気づいた。







みんなと別れて、



2人になった紅葉と萌。



紅葉がいつもより少し低い声で



ポツリと言う。



「…どうする?


これって



…あおられてる?」



萌が同じトーンで返す。



「え?もちろん



…受けて立つよね」



視線を合わせる



萌と紅葉。




「やってやろうじゃない」



2人の声がハモった。