「どういうこと?」



唖然としちゃって



黙っていた



紅葉(くれは)がつぶやいた。



昨日、萌とバイト一緒に入れなかった



たった半日の間に



萌はクビになったと思ったら



クビ撤回になって



若業のオトコと



トモダチ?!



何それ?何それ?



萌らしくない。




何でそんな簡単に信用してんの?



よりによって



何で、若業なの?



何でそんなことに、なってんの?




萌はほんと、女の私から見ても



可愛くて



でも、それだけじゃなくて



中身がすごいの。




紅葉は理数が得意で好きだから



今の学校の特進の理数科に入ったんだけど



萌は



〝巨乳は頭悪い〝とか言われて




その根拠ない悪口に




そんなことないもん。って



見返してやる!って



理数苦手のバリバリの文系だったのに



めっちゃ



頑張って、ここに入ったんだって





それだけじゃなくて、同じ理由で




足も早いし、球技も上手!




すごいよね?



めっちゃ、頑張り屋さん。



そんなちょっと単純だけど




根性あって、ほんとにやりとげちゃう




萌のこと



紅葉は大好きだし、




尊敬してたりする。



でも、そのぶん擦れてないっていうか




素直すぎるとこは、長所なんだけど…



前から心配だなって思うとこはあった。



ナイスバディで可愛すぎるから、



オトコに注目されること多くて



その分 萌は警戒心強いんだけど、




強いぶん、




信用しちゃったら…もう…。




あー!もう。




今までそんなオトコいなかったのに!




「絶対下心あるに決まってんじゃん」



やだ。やだ。




すごい警戒してたのに、




オトコなんか大嫌い。




そう言ってたのに、



萌が、傷つけられたらどうしよう。




「サイアク。



やめてほしい」




その言葉に反応したのは、



アラタとかいうやつのトモダチ。




(そう)?とかいうオトコ。



大体、なに?



この奏にしても、アラタにしても



全く、信用できないんですけど。



何か2人して、顔面偏差値は高いし。



背も高くて、シュっとしてて



適度にチャラそうな…




モテるオトコの匂いがプンプンする。




絶対、遊んでるでしょ。




嫌いなタイプのど真ん中。



特にこの、奏は…



スパイラルパーマが軽くかかった




柔らかそうな黒髪が



目にかかる位置にある




鼻筋がすっとしてて



眉毛が力強くて、濃いめ。



全体的に整い過ぎっていうようなイケメン。




多分、笑ったらかわいいんだろうけど




こうやって、わたしに



挑むように視る



その視線は強くて。



第一印象はハッキリ言って


こわい。



黒々とした瞳に



コントラストを強調された



目の白さがキラキラしてる。



頑なさを感じさせる



少年っぽい感じと、オトコっぽさが 



混同してて…




胸のなか、ザワザワ




落ち着かなくさせられる。




って、何見つめてんの。わたし。



ほんと、やっかいそうなオトコ!



それだけ。



でも、そんなとこまで



…。



紅葉は



…キライ。



すごい、苦手なタイプ。



…誰かに似てるから。




『女の子になんて、本気にならなくて



ただ、目の前にいるから。



手を伸ばせば届くから。



手に入れるだけ。



女の子の涙なんて



気持ちなんて



心に留めもしない。



悪いオトコ。』



そうでしょ?



今が、



自分が楽しければいいタイプ、




…でしょ?



なんて、勝手に思ってたら…



「チッ」



「自惚れんな。



オトコがみんな



お前のトモダチに



惚れると思うなよ」



って



え?



わたし、ケンカ…売られてる?



自信過剰なんだよ!っていう意味?



って、



その前に…



今、『チッ』って



言わなかった?



…舌打ちした?



このオトコ、



ムカつくーっっ。



紅葉のなかで怖いより腹立つが勝る。





買ってやろうじゃないのーっ。



「独り言に勝手に入ってこないでくれる?



ムカつく」



「あ?なんだ」



ますます、すごんでくる奏。



眉毛がグッて寄せられて…



すごいイラついた顔してる。



その顔に近づいて



わざとらしく、舌鳴らして言ってやる。




『チッ』



「テッメっ。」



キレそうになった奏は



コウタに押さえられて




「どうどうっ。奏ちゃん!ストップー



相手は女の子だぞ」



ジタバタしている奏は



ガルルルルって、擬音が聞こえてきそうな




顔してる。



へーんだ。ざまあ。




…って、このオトコは



わたしには



関係ないんだから!



置いといて。



そんなことより




萌が心配!




ほんとに大丈夫?




ちゃんと送り届けてくれてるんでしょうね!