紅葉が慌てて。



バッ。



顔を背けて



「は、離してっ」



やだ。




…見られた?



紅葉は必死に



この体勢から抗おうとするのに



「…無理」



なんて言う奏の手は



しっかり紅葉を掴んでて



「なに、泣いてんの」



奏が言った。




…見ないで



見られたくなかったのに…



だから、来ないでって。



追いかけてきてほしくなかった。



紅葉は



声もなく泣いちゃってたから…



「う、うるさいっ。



離して」



なんとか、強気で言う紅葉に



また奏ちゃんは



「やだ」なんて言う。



それだけじゃなくて。



「見せて」なんて



言ってくる奏。



は?



何よ



こんな時まで、ドエスなの?



ジタバタ。



紅葉は暴れるのに



奏ちゃんの手は



ビクともしなくて。



紅葉を離してくれない。



それどころか



紅葉は



奏の手で



簡単に引き寄せられて。




奏の瞳が



紅葉の涙目顔を覗き込んでくる。



もうーっっ。



「ば、


バーカ、バーカ。



ソウジロウなんて、



やめてよ。



まじまじ見て」



子どもみたいに



悪口いうしかない紅葉。




文句言ってるのに




ソウジロウって名前呼んだのに




奏ちゃんは




紅葉を




紅葉の瞳をずっと見てる。




紅葉は



紅葉は、




どうしていいかわからなくて、



「だから、見ないでって



そうちゃ、ソウジロウなんて



意地悪で、アソビーで、ヤン」




そんな文句ばっかり並べ立てる




紅葉に




奏は



キスをした。



チュ。




触れるキス。



文句いいかけた口にキスされて



少し口を開いたカタチで




唖然と、とまっちゃう紅葉。



え?



え?




「な、なんで、なに?




こんなことす」




びっくり顔の紅葉の言葉はスルーされ





「俺のことで泣いてんの?」



奏がまっすぐ見つめながら




そんなこと言ってくる。




「ちが、ちがうもん。



これは自分が



自分のせいで」



言ってるのに



また、チュ。




奏ちゃんが笑みを含んだような



瞳で…



反論して、怒ってるのに



なんで、キスー?!



わけがわからない紅葉に



奏ちゃんはまた



「ほんとに?」って、



何でか、優しく聞いてくるから




何が



何で



何なの



プチパニな紅葉は



「ーっっ。


もう、バカ。



奏ちゃんのせいじゃん。




奏ちゃんのせいに…」



またこぼれる涙と一緒に



怒ったように言ってしまう。




泣いてるのも




こんな気持ちになるのも




ぜんぶぜんぶ



奏ちゃんのせいだもん。



ポロ。



涙をこぼす紅葉に




「何でだろ。



…すごい嬉しいんだけど」




奏ちゃんが、ほんとに



何でよ?!



そんなこと言うから。



紅葉は、



グスン。って鼻すすって



ほんとに、



「何でよ」純粋に聞いちゃう。




奏ちゃんは



「何でかな。」



そう言って



また



チュ。



紅葉に触れるキスをした。