「国立第三十四中学校」はこの学校を呼称する為の記号のようなものだ。それまであった学校を全て日本国が吸い上げ、統合し、首都から第一中学・・・と記号を割り振ったに過ぎない。中学校では15歳の成人を迎えるまでの子どもを、準義務教育と位置付けて、最適な人数で最適な教養を身に着ける時間を保全することが目的だそうだ。

 準義務教育という定義の詳しい部分は分からないけれど、要は学生全員が籍を置いているのだけれど、登校するかしないか、勉強をするかしないか、自由意思によって決めることができるもののようだった。実際に20人クラスとされている、この三学年も登校をしているのは、ぼくを含めて15人程度、時折顔を出す人もいるし、中学校に入ってからまだ一度も会ったことがない人も数人いる。

「とまあ、まだ最終学年になったばかりなわけだが、そろそろ皆もこれから先について考え始めている頃なのかと思う。近いうちに簡単な進路相談をしようと思うから、これから何をしたいのか?ちょっと考えてみて欲しい」

 この学校に教師は3人しかいない。今近代史の授業をしている三学年の担任の大井 遊星(おおい ゆうせい)先生と、二学年担任で外国語担当の桜井 瑞希(さくらい みずき)先生、そして一学年担任で情報処理担当のチャールズ・萩原(ちゃーるず おぎわら)先生の三人だ。

 その他の教科に関しては大半はオンライン授業が導入されており、全国の中学生がそれぞれの教室や、場合によっては自室から講義を受けている。稀にそれぞれの専門分野を研究している変人が講師として在籍していることもある。三十四中の講師はたった1人だけだ。

 そして、勤労の権利によって就労する際の数少ない進路として「教師」と「講師」はとても身近なものだ。後は情報技術における「エンジニア」や「政府官僚」くらいが分かりやすい就職先と言えるだろう。といっても、僕はこの権利を行使するつもりはないので、実際に行使する予定の人でもいればもっと詳しいのだろうけどね。