そして、そんなふうに話しているうちに、あっという間に家の前まで到着。


「あ、翠くん、もうここで大丈夫です」


そう言って立ち止まる。


「へー、涼川の家ってここだったんだ」


「うん。あの、わざわざ送ってくれて本当にありがとう」


「いえいえ。どーいたしまして」


その瞬間、翠くんが繋いでいた手をパッと離す。


そして、その手を私の頭の上に乗せると、そのまま優しく撫でるようにポンポンと叩いてきた。


「それじゃまたな。おやすみ」


見上げると、微笑む彼と目が合って、また心臓がドキンと跳ねる。


「お、おやすみっ」


私がそう返すと、ヒラヒラと手を振り、背を向けて駅のほうまで戻っていく翠くん。


そのうしろ姿を見送りながら、胸にそっと手を当てる。


うぅ、どうしよう……。まだドキドキがおさまらない。


あの人気者の翠くんと、手を繋いで一緒に帰ってしまった。


私、夢でも見てるのかな?


なんだか今日一日で彼と急接近してしまったような、そんな気がして。


きっと、色々な偶然が重なっただけだろうとは思うけど。


でも本当に、夢みたいな一日だったなぁ……。


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