「翠先輩!」


するとその時、また教室の入り口のほうから可愛らしい呼び声が響いてきて、心臓がドクンと跳ねた。


ウソ。この声は……。


振り向くと、やっぱりそこには、天使のように可愛らしいあの春田さんの姿が。


また来たんだ。


「あれ、なんだよあいつまた……」


すると翠くん、少し呆れたような顔でそう呟きながらも、「ごめん、ちょっと行ってくるわ」と私に告げて、春田さんの元へと歩いていった。


そんな彼のうしろ姿を見送りながら、また胸がギュッと苦しくなる。


春田さんは翠くんが声をかけると、彼の耳元に顔を近づけ、ナイショ話のようにコソコソと話し始める。


その様子を見ていたら、ますますモヤモヤが止まらなくなって。


やっぱり翠くんは、春田さんのことが好きなの?


だったら私に優しくなんてしなくていいのに。


辛いよ……。


どうしようもなく胸が痛くて、苦しくて、思わずまた涙が出てきそうになった。


.





.