翌日、朝登校して自分の席についていたら、翠くんがいつも通り笑顔で話しかけてきた。


「ヒナ、おはよ」


「あ、おはよう……」


だけどやっぱり気まずくて、目を合わせることができない。


そんな私に向かって、いつもと変わりない態度で接してくる翠くん。


「昨日ごめんな。大丈夫だった?」


「だ、大丈夫だよっ。私のほうこそごめんね。先に帰っちゃって」


「いや、俺は全然大丈夫だけど」


すると翠くん、うつむいたままの私を見て、少し不思議そうに尋ねてきた。


「ヒナ、どうした? なんか今日、元気ないけど」


どうしよう。気づかれちゃったかな。


「えっ? そ、そんなことないよ。特に何も……」


「ほんとに?」


「うん」


「そっかー。もしなんか悩みとかあるんだったら言えよ。俺でよかったら聞くから」


「あ、ありがとう……」


優しく声をかけられて、複雑な気持ちになる。


だって、聞きたくても聞けないよ。「春田さんとどういう関係なの?」なんて。


「昨日抱き合ってたのを見た」なんて、言えるわけがないし……。