そうされると、なんだか美紅のほうが悪いことをしている気になる。

一慶が佐和子を好きなままでもいいと思ってきたが、それは間違いだとわかった。べつの女性を想っている一慶とのキスは、胸が痛いだけだったのだ。

いつか美紅を見てほしいという願いは、永遠に叶わないだろう。


緒方家の別荘は丸太を組んだ、かなり大きなログハウス風。家族ぐるみで交流があったため美紅は何度も来たことがあり、懐かしい思いが込み上げる。

ペアで部屋割りをし、美紅は佐和子と同室。シングルベッドがふたつ置かれた部屋は、リビングやキッチン同様に木の温もりにあふれている。
ほかにも同じような部屋がいくつもあるから、ペンションとしても使えそうだ。


「さてと、それじゃ早速バーベキューの準備をしようか」


部屋に荷物を置き、佐和子が楽しげに声を弾ませる。


「うん、そうだね」