されるがまま舌を絡めていると、一慶は抱いていた美紅の腰を手前に引いた。その瞬間、美紅の視界が反転する。フロアに押し倒されたのだとわかったのは、背中に毛足の長いラグの感触を覚えたためだった。


「――いっくん!?」


驚いて声を上げたが、一慶は美紅の首筋に唇を這わせはじめた。
美紅の声が聞こえなかったとは思えない。


「ね、いっくんってば」


体をよじって逃れようとするが、のしかかった男の力に敵うはずもない。
一慶がいきなり獣のように思えて怖くなる。

こんなのいや……!

いくら一慶を好きでも、衝動的に奪われたくない。経験がないことも、美紅を怖がらせる一因だった。


「いやっ! やめて!」


渾身の力を振り絞り、一慶を押しやる。
一慶の心が掴めない悲しさと、男の本能を見せつけられた衝撃で涙が滲む。