一慶が真顔でとんでもないことを言う。

真実って……けっ……こんを……?

ドキンと弾んだ鼓動がいきなりハイスピードで脈を刻みはじめた。
ところが動揺しているのは美紅だけ。一慶は即座にしゅっと目を細めて、意地悪に口角を上げる。


「冗談だ、冗談。そんな顔すんな」


わかっているくせに心はたやすく翻弄される。


「も、もうっ、変なジョークはやめてよ」


美紅は一慶の背中をトンと叩いた。
真剣な顔で言うから本気にしそうになったではないか。本当に勘弁してほしい。


「ほらほら、調味料コーナーに行くぞ」


悔しいくらいに美しい笑顔を向け、一慶は通路の角を曲がった。

その後の美紅は女性の放った〝新婚さん〟の言葉に惑わされ、一慶との距離感をつかめないまま会計を済ませたのだった。