どうしてそんな嘘をつくのか。
否定しようにも、一慶に体が触れ合っているため気が動転して唇は動かない。


「やっぱりそうなのね。うらやましいわぁ。末永くお幸せにね」


女性はニコニコしながら会釈して、美紅たちから離れていった。


「さてと、次は調味料か?」


さっと離れた一慶が再びカートを押しはじめる。


「ちょっといっくん、なんで新婚なんて」


その背中を追いかけ隣を歩く。


「そう思われたんだから、わざわざ否定する必要もないだろう? どのみち二度と会わない相手だ」
「だけど嘘つかなくても」


いくらもう会わないとはいえ嘘はどうなのか。それも新婚を装うなんて、美紅の心臓に悪い。


「そんなに気になるなら真実にするか?」
「えっ……」