オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~



二十七歳にもなって、そんなことにどぎまぎするなんて情けないにもほどがある。

とはいうものの、美紅には恋愛経験が一度もない。いいなと思う人がいなかったわけではないが、どの人も一慶以上に好きにはなれなかった。

同級生と五つ年上の一慶とを比べるのは酷だろうが、それは社会人になっても同じだった。
店に出入りする取引先の営業マンに告白されたが、一慶と同じ年の彼でも、やはり一慶の姿が頭にチラつく。つまり年齢云々ではない。一慶じゃないから好きになれないのだと気づいた。

何年も会っていなかったのに、幼い頃に抱いた恋心は、鮮烈に美紅の心を縛りつけて離さない。おかげで恋を未経験のまま大人に。今頃ひょっこり帰ってきたうえ同居だなんて、どんな巡り合わせなのか。
だから間接キスごときで中学生のようにドキドキしても仕方がないのだ。


「ハルとは頻繁に会ってるのか?」


一心にコーヒーカップに向いていた意識が呼び戻される。


「ううん、そんなに頻繁じゃないよ。一年に三~四回くらいかな」


たまに『ご馳走するよ』と食事への誘いがくる。佐和子が一緒だったり、ふたりきりだったりいろいろだ。