ドキッとして体が硬直する。
「……甘っ」
一慶は顔をしかめてカップを突き返した。当然といえば当然の反応だ。
「そ、そうかな」
動揺をなんとか隠そうとしたものの口ごもる。次にどこから飲もうかと、不自然なくらいにカップを凝視した。
「ベッドのほかに美紅の荷物はどのくらいある?」
「え? あ、うん……そうだな、まだ準備もしてないからなんともいえないけど。引っ越し業者を頼むほどではないと思う」
うわの空でカップを持ち、そっと口へ運ぶ。
このくらいで手が震えてどうするの……!
自分を叱咤してはみるものの、ぷるぷるするのを止められない。わざわざ一慶が飲んだ場所を避けるのは不自然なため、思いきって同じところに口をつけた。
間接キス、しちゃった……。



