ぎゃ、と苦しむ鳥のような声が出た。 「色気がねえ」 「や、やめてもらって良いですか」 「後ろ歩きしろ」 「え……」 うしろあるき。 腕を掴まれて立たされる。 よろよろと後ろへ足を進める。爪先から地面について、踵を離す。 「あ、なおりました」 「そりゃ良かったな」 腕を離されて、緤が屈む。何をするのかと視線で追えば、バッグを掴んでこちらに寄越す。 「ありがとう、ございます」 「行くぞ」 もしかしたら始まってるかもな、と脅しをかけてきながら、緤は異次元には繋がっていない廊下に出た。