『なんか…なんかありがと』


「ん?いやぁこちらこそ」


『私が何をやるのかは決まってるの?』


「やりたい事は…ないって言うんだろうな。まぁ仕事は腐る程あるから。」


『兄貴へは?』


「言わねー、自分の事放っぽり投げてお前のとこ行きそうだから。あいつはさ、いつでも会える距離にお前がいてやればそれで精神的にも安定するだろうから」


『安定剤と、雑用?とでも思っておけばいい?』


「そーだな、ビザはいつ切れる?」


『再来週』


はい?


いや、はい?


何ビザかは知らないし昔から行ったりきたりなだけあって慣れてるかもしれないけど、と何故か本人より慌ててしまう。


「お前荷物や…そもそも住むところは!?どうしてたんだ!」


『それこそ日本よりどうとでもなるさァそんなの』


嘘つけ!と思わず声をあげれば笑ってる電話の向こう。


『いやいや、荷物は確かにそうだな…ケリーに送って貰うとして住んでた所は引き払う必要は無いと思ってるから』


ケリー…あぁ親戚の。
金髪美女が確かいたな、会ったことねーけど、と少し冷静さを取り戻して。


「逆に留守にして大丈夫なのか、手放さないってことはそういう事なんじゃ?」


『管理を任せられる人はいるし、そもそも私に相続権があるのかすら分かってない』


「ビザが切れたらどうするつもりだった?申請するにしても時間がかかるだろ」


『内緒話は得意でしょ?』


「俺んとこかよ!予定通りってか!?」


『いや大誤算、養ってもらうつもりだったのに』


働かなきゃいけないなんて、と大袈裟にため息。


「てめー嫁に貰うぞ!?」


『あ、いいねー、等親的にも血筋的にも問題ない』


従兄弟とは言っても、血の繋がりはないし法律的にも結婚は出来る、家系図的に親族にあたる《事になった》だけなのだから。


『いやでもさ、ほんと電話するつもりだったから。タイミングバッチリ過ぎて笑えるわ』


なんて、笑うどころか平然と言ってのける。