自由に羽ばたくキミが

そう言われた照樹だが、ここまでとは知らず。
撮るのが好き、得意、評判が良い、それだけで実際はそんなに写真を見た訳では無い。


なのにだろう?なんて誇らしげな姿を、咲名が冷めた目で見る。


「やっぱりな、言ってたより音楽が好きってか…やってた?」


「は、えぇ?」


急な問いに、酷く間抜けな返しをしてしまった。
警戒した上でバレたなら、晴人には本気で油断してはならないのだろう。


とは言っても数年前のレジェンド達とのステージを知られたくないだけで、こっちでのバンドとか、そういった事を隠すつもりは無かったのだけれど。


「えっと、そう…ですね。なんでそれを?」


「このパブ行ったことあるよ、イギリスの音楽が好きな観光客なら真っ先にプランに入れるところ」


コアな人ならね、という晴人は、自分で言う程にはコアな人らしい。


そんな事は知らなかった咲名、だって父親が連れて行った、ただの地元の飲み屋なのだから。


いつでも音が出せるように楽器が置かれていて、ライブハウスとしても使われていたそこで。


何度歌わされたか分からない咲名、伝説の歌姫と知ってる身内が集まる時に限りだったけれどそれでも数え切れないほど。


「そうだったんですか、ほんと…地元の居酒屋感覚だったから」


「いい環境だね、高い旅費出してわざわざ行くところを…クク、地元って」


ケラケラ笑う晴人、確かにそうだ。
人生の半分を向こうで過ごした咲名、もういっそその辺も聞かれる前に話してしまおうか、なんて。


地元呼ばわりしてしまった事で根掘り葉掘り聞かれそうなこの雰囲気に悩み出したところで、気を使った照樹。


「まぁその辺は歓迎会で、気になるやつが直接聞いてくれ。
写真はこんな感じ、分かったな?話を進めるぞ?」


はーい、と大人しく従ったそれぞれ、モニターも消された。
データはどうするか聞かれたがお好きなように、と支障ないものしか同期してない咲名は中田に一任。


本格的に始動するのはそれぞれのグループでの打ち合わせが終わり次第、随分ざっくりだがみんな乗り気だからすぐだろう、との事で。