ワンルームじゃないだけ良いとするか、とすぐに納得して見せたのは、さっきも言われたから。


投げたんだから文句は言えない。
とにかく、一度見てからだと。


明日は自分の家となるところを見せてくれるらしいので。


見るまでは想像することすら出来ないので、思考は他所に。


「照にぃは随分と無機質な部屋だったね、最低限の物しかなくて。
私は今日は床で寝るのかい?」


「布団買ったさ、可愛い姫を床に転がす訳にゃいかないから俺用の布団をな」


お前はベッドで寝ろ、シーツも枕も全部新品だって。


何泊するのかは分からないけど、一時的な事にそこまでしてくれる優しさを素直に有難いと。


「恩は仕事で返すわ」


別に照にぃのやつでいいのにって。
新品を買うまでしなくたって、従兄弟なんだから嫌悪感ないのにって。


元々転がり込む気でいた咲名だから、まさに至れり尽くせり。


「カメラは持ってきたんだっけ?一応会社でも用意はしたんだが」


「あー…プライベートと仕事分けたいからカメラも分けるよ、使い方覚えればちゃんと相方になれると思う。けどまさかだったわー」


大袈裟に言えばカメラマンなんて、と言う咲名。
出来ないとは言わないのはセンスの良さには定評があるから。


特別なことをする訳ではないのに。
何故か被写体はいつもいい表情で。


その時の感情がしっかりと伝わってくる、静止画なのに躍動感やリアル感が現れてる。


「おっさんややんちゃそうな兄ちゃん、小汚い風景でしか撮ったことないよ?」


「はは、そんな言い方するなよ」


「あんなキラキラ星人眩しくてレンズ覗けないかも」


そもそも覗かねーよ、デジタル一眼レフだわって。


咲名が父親から譲り受けた少しクラシックな物とは根本的に違うもの。


ライブフォトなんかを撮る時は咲名もデジタルを使ってたから、扱いに不安はない。


「まぁ、なんだかんだ楽しみかも」


「もちろん補佐としての仕事もあるからな」


そのうち運転も任せるかも、なんて。


メンバーの移動手段で多用される車、都内を!?と慌てるのは運転が久しぶりだからで。


バンドの大きな機材車を運転出来るんだから、特に問題はない。