「あの日の後だったし、なんか周りの大人がザワついてたから疲れてたのもあると思う、心配かけたならごめん」


「今がそれだけ元気になれてるから、安心したし」


別に謝ることじゃない、と謎の励ましムード。


「親父さんが亡くなった事もあって、あれ以上に酷く落ち込んでたらって心配もあったけど」


翼は一時帰国の時に会えてないから、尚更心配したみたいで。


「パパが向こうで落ちた気分をグンと引き上げてくれたからね、悲しかったし寂しかったけど、パパと楽しくやれたから私今元気だよ」


「昔の天真爛漫さは足りないが」


「大人になったってことでしょ」


「無鉄砲で破天荒さは変わってねーし」


ディスってんの?と相変わらず寄り添う翼の鼻を摘んでやる咲名。


「もういい?聞きたい事はない?なんか余計なことばっか話した気分だよ」


おいおい話すつもりではいたけど。
家族に隠す事でもないと、昔からわりと大っぴろげな性格だったから。


けど、父親や母親が自分のせいで、と責めるような事は言いたがらなかったのは翼と咲名二人とも同じ。


今ではどんな話をどんなタイミングで言えばお互い傷つかないか分かってきたし、苦労したとか大変だったとネタにさえ出来るようにもなったけど。


「明日に備えて解散だなぁ、どんだけ飲むんだよ」


お酒はもういいって言ってない!という咲名、顔色一つ変えずにまた少し強くなりやがってと。


咲名程は飲めない照樹、これからは進んで運転に励もうと心に誓う。


潰されかねないから。


翼も朝早いと言うし、仕方なく帰る方向で話は済んだけど。


「私翼の妹の友達って事にすると思うから、久利生咲名、よろしくね」


「んん?おけおけ、妹の名前までは言いふらしてねーし、世間は親父が再婚って知ってるから妹は歳が同じってのは俺が言わなくても先に知られてたから」


それでいいと思うって。


「名前までもう決めやがって」


「あんたとも友達って設定にしてあげるんだからいいでしょ」


そうだな、と。
今日は親父と帰るわって、二人はタクシーで帰っていった。