そんなリアクションされるって分かってたから、あまり言いたくは無かったことだけど。


「言っとくけど、私別に引きずってたり悲しんだりショックで立ち直れないとかじゃないからね、それもあるだろうなって思いながら私だってそんな相手といれば楽だし楽しいかなって」


言うほど気楽に受け流せた訳じゃないし、それなりに引きずって落ち込んだこと、だけど自分の環境を責めても仕方がないし。


そんな事ばかりだからキリがない。


それに自分だって、私こんなこと出来ちゃうよ?みたいな、利用してみたら?みたいなそんな狡がしこさは持ち合わせてた。


もちろん自信があってのことで。


当時この人いいなって思った相手がバンドマン。
歌が得意と聞かせれば好感触、そのまま隣にいることを許されたし一緒に音楽をやる事にもなった。


彼氏と彼女、そう見られてるのはお互い分かってたけど、あえて否定も肯定もせずに。
過ごし方だってそれなりのコトは済ませた訳だし。


ただ、相手にもプライドはあって。
咲名の才能は認めてたけど、環境までを自分のいいように使う気はなかったのに。


咲名も使わせる気はなかったのに。


無自覚で飛び込んだ先が相手のプライドを傷付けるのには、充分だっただけで。


好意が向いてると思ってたのに、それが理由で突き放されたことは咲名にとって辛かったこと。


言葉にはされなかったけど、愛情は感じてたから。


今となっては、どういうつもりだったか確かめるに値しないくらいには過去の事と消化出来てる。


それだけ大きな出来事があったから。


「人が変わるように暗いやつになったから、変な心配してたけど。
大丈夫なんだな?なんか酷いことされたとかは?」


「ないない、そんなに暗かった?バンド活動とか仲間が一気に手元からなくなったのは確かにしんどかったけど、てことは明るく過ごす場所とか相手がなくなったから、落ち込んで見えたのかなー?」


「この世の終わりみたいな顔、してたぞ」


「…はは、そっか」


隠せてたつもりでいたのに、そんなふうに見られてたなら。


その時の時間は確かに止まってたのかもしれない。