「お金は稼がなきゃいけないよ、仕事だし、自分の力や才能を測るのに一番分かりやすい目安にもなる。沢山あればそれがまた力になって、やれる事も増えて実績が増えてステータスになって…それは分かってるんだけど」


逆にそこまで分かってたことに驚く大人。
社会の仕組みだって分かってる咲名なら、そんな所はシビアに接する事が出来るし。


そんなことを何もやりたがらない理由にはしない、むしろ自分の強みにだって変えてもいいはず。


「自分でどうありたいか見極められてもないのに値段付けられたって、お金を稼ぐことを目的に話されたって楽しくないじゃん、自分だけ楽しんだって仕方ないじゃん、どう人を喜ばせるか、夢を与えられるか、そんな話からまずして欲しいよ」


「おぉ?じゃあそんな話からしてくる人間がいたら、お前は話に乗るのか?」


「乗るかどうかは分からないけど、乗れるかどうかは挑戦するさ。そこまで成功して初めてビジネスと思ってる」


甘い事言ってんのは承知の上、とタバコをひと吹かし。


「私が自由にこっちと向こう行き来出来てるのはそんな《お金のおかげ》だし、お金が嫌いとかって話じゃない、資本金を提供してもらえる有り難さを理解せずに努力や地道さを誇るなら、自己満足の域で足踏みすると思う」


地元の仲間との話を聞いていた照樹、どこか矛盾を感じる咲名の話。


自分の言ったことにグッときたと言われたのは素直に嬉しかったから、黙って聞いてはいるけれど。


そんな仲間を切り捨てても来た咲名だけど、ビジネスの話に乗らない自分は足踏みすらしてない、と言ってるようなもので。


結局のところ、何が言いたいのかは分からない。


「やりたい事やって成功して結果それがステータスになって、大富豪と。


成功間違いなし!って言われて始めるのとって、モチベーション全然違うよね?」


つまり、咲名はやっぱりと。


スタートダッシュを切り過ぎた、ということ。


だって何も持たないうちに成功してしまったのだから、モチベーションに繋がらない、と言いたかったらしい。