『いやもうそれは本当によく分かるしごめん、マジでごめん。けど簡単にうんって言えないのも尚更分かってくれる、よね?』


「これはお前の為の提案だ」


押し問答が続くと見区切ったので、ここは少し強気に。
こいつに強く言えるのは俺しかいねー!と意を決してのこと。


どいつもこいつもデレデレして甘やかしやがって!俺だって嫌われ役じゃなくて甘やかして甘えられたいんだ!と本当は不服な事。


「お前の兄貴は今お前に会えない事でイライラが募りに募ってる、学生時代お前の為にいじめっ子を片っ端からやっつけた結果ヤンキーに成り果てたことを忘れたのか!?今のあいつがまたあんな事になれば会社イチの不祥事であいつの夢も将来もパァだぞ!?」


『結局兄貴の為かよ!?』


「馬鹿言えお前だってもう二度と自由は訪れない!」


確かに!と電話の向こうでハッと気付かされたかのようなリアクション。
これはイケる、と立て続けに。


「やる気はある、社長のジュニアだからって甘えもせず研修生として地道に頑張ってんだ、お前が帰ってきた時に俺が面倒みれるようにってな。でもやっぱりどこかでイロモノ扱い…社長だって特別扱いはしてないがどうしても切り離せるものじゃない、分かるだろ?」


『分かりすぎるよ…つーか私の面倒見るためって。自分の夢の為に頑張って欲しいんだけど』


「だから、帰ってこいよ。元気な姿見せてお前も頑張る姿見せて、やるべき事にあいつが本気で打ち込めるように」


『…私は、そこに。
居場所はあるの、かな、なんて言うかその』


「作れよそんなもん、てめぇの手で作るもんだろうが!何があったか知らねーけどな、お前はそんなもん気にせずいつも自力で頑張ってたじゃねーか!」


『そのせいで仲間外れなんだよ!結果な!


…親父と兄貴、には絶対、言わないで欲しいんだけど、』


「言わねーよ、話す気になったか?」