あるなら嬉しいけど、なんて言うから。
自分用を頼むつもりではいるから、少し多めに頼んで翼に分けてあげようって。


そんなやり取りをしてる最中でも翼の腕は咲名の肩に回されたまま。


これではまるで恋人、しかも欧米でしか見ない距離感。


ラフに回されてるし、引き寄せられてる訳でもないのに。
咲名だって寄り添うように身を預けちゃうもんだから。


「個室だから何も言わないけど、翼お前人前に出る人間としてはそれはNG」


「雑誌のインタビューで可愛い妹がいるって答えてるし。普段会えないから会えた時は恋人みたいに愛でるって、男避けも兼ねてるから人前でも平気でするって」


だから見られても平気、と謎の自信。


「会社で会ってもこれは咲名が困るだろ」


「その辺は弁えてる、俺の妹イコール親父の娘、ってことは社長令嬢だかんな」


話の早さは咲名の言う通りだけれど、思った以上だったから。


理由を聞けば、フンっと不機嫌そうに。


「俺だって苦労してる、わざわざ可愛い妹に同じ思いさせる訳ない、咲名が我慢してそんな思いする理由もないからな」


なるほど、どこまでも妹愛。


「変なの目当てで変な奴が寄ってくるのも嫌だし、やっかみもあるだろうし」


金目当て、人脈目当て、出世目当て色々ある。


「つっても会社には来ないだろ?来てもそれこそ親父に会いにだから、俺がバラさなくてもバレるんじゃね?」


「暇な時バイトするかも」


「金ならやる、働くなよ」


「暇しに日本に帰ってきた訳じゃない、それならイギリスに戻るよ」


「はぁ?許す訳ねぇ、俺のデビューを見届けろ」


まずは兄さん達が先だろうけどって。


その辺はなんとなく序列的なものがあるらしい、兄さん達とはきっとLIBERAのことだろう。


「金はやるって、デビュー前の研修生がそんなに持ってんの?」


「稽古は金になんねーけど、ロングランの舞台でもやりゃそれなりにな、先輩のバックもツアーついて回ればスゲーよ」


え、じゃあさっきの人達なんて凄いお金持ち?なんて、凄いお金持ちの咲名が思い浮かべる。